卒業しました
今日、渋谷アートスクールのプロコースを卒業しました。
渋谷アートスクールに、松本修一先生に出会えて
本当に本当に良かった。
色々と回り道もしたけれど、全てはここに来るための布石だったのかもしれません。
渋谷アートスクールに通った日々を振り返って見ようと思います。
● 線画もまともに描けない ●
渋谷アートスクールの門を叩いたのは去年の6月でした。
好きでイラストを描いていたと言っても
落書き程度でデッサン力もなにもかも無い全くのゼロの状態からのスタートでした。
最初の2ヶ月は鉛筆でただひたすら女の子の全身像を描いていました。
ポーズもつけられないから、正面を向いて立ってるだけの絵です。
「頭が大きい」
「左右の手足の長さが合ってない」
「首が短い」
「太り過ぎ」
「笑顔がない」
と、いろんな指摘をうけて、それをひとつひとつ消化して描き直して
また新たな指摘を受けるの繰り返しでした。
● トライアンドエラー ●
2ヶ月たったころ色をつけて描くことを許されました。
女の子が一人で正面を向いて立っているのは同じなのですが、
「最低でも10色使って描くこと」
という課題に、頭を抱えてしまいました。
一人の人物のイラストにそんなに沢山の色を使うことができないのです。
さらに、アクリル絵の具を使うのも初めてで、
どんな筆を使えばいいのかもわからず手探りで進んでいくしかありません。
紙も筆も絵の具も、随分といろんなものを買ってためしました。
最終的に「これ」と決まるまでに半年以上かかったし、
結構お金も使ったと思います。
今になって思うことは、何事にも「正解」というものは無くて
それぞれが自分に「しっくりくる」やり方があるだけだということ。
それには実際にやってみるしか方法は無くて
トライアンドエラーの繰り返しで進んで行くしかないのです。
これは結構苦しいものです。
何か「正しいやり方」があるんじゃないのか
と思い始めると自分が間違ってるような無駄なことをしているような
絶望的な気分になって、不安と焦りが大きくなっていきます。
そんな時「正解はどこにもない」ということを思い出せば
冷静になって、落ち着いて淡々と進んで行ける気がします。
自分の感覚、自分の気持ちを大事にすることが肝心なのだと思います。
● 他では得られない教え ●
色付けの絵を描きだしてからも
自分では気がつかない部分で様々な指摘をしていただきました。
デッサン上の指摘に加えて
色の選び方、配色、構図について教えていただきました。
楽しい場面には楽しい色を。
キャラクターが生きる構図を。
ついつい渋いシックな色使いになりがちで沢山描き込みすぎる私が
何度も何度も指導していただいたことです。
趣味で描く絵とプロのイラストレーターとしての絵の違い。
その部分の教えは、なかなか他のスクールでは得られないのではないか
と思います。
松本先生は、絵の描き方のテクニック的なものにはあまり言及なさいません。
「上手な絵」を描くことが目的ではないからです。
それよりも「魅力がある絵」「個性がある絵」であること
プロとしての見せ方(魅せ方)を心得ていること
そのふたつを徹底的に指導してくださったように思います。
● 転機となった一枚 ●
9月の最初の講座に、渾身の一枚を持って行きました。
私の絵を見た先生は
「これだけ描ければたいしたものだ」
と言ってくださいました。
そして、私よりも後から入った生徒さんを呼んで
「カラフルとはこういう絵のことだ」
と見せたのです。
やった!と思いました。
自分が良いと思うように描いたものが評価されたことは
そのあとの私に大きな影響を与えたと思います。
自信とまではいきませんでしたが、
なんとかなるかもしれないと思わせるに足る出来事でした。
その絵がアナログ作品集にも掲載している
「フラワーガール」です。
私にとって忘れられない思い出の絵となりました。
● 画集を作る●
フラワーガールを見た先生から、
売り込みに向けての作品集にとりかかるように言われました。
今までも一枚一枚丁寧に一生懸命に描いていましたが、
これからは実際に人に見てもらう絵を描くわけですから
それなりのレベルに達していなければ作品として使えません。
その「それなり」のレベルを見定めてもらうのが
これからの指導のポイントとなっていきます。
色使いと構図についての指導はますます厳しくなりました。
OKと言ってもらえるのは3枚中1枚くらいです。
結構時間をかけて描いた自信作を
「人には見せないほうがいい」と言われてしまい
がっかりして、駅までの坂道をうつむきながらとぼとぼと歩いたことも
何度もありました。
何がいけないのか、なかなかつかむことができません。
悩んだり迷ったりする時間が長くなり、なかなか絵を描くことができなくなりました。
1週間に1枚の絵を仕上げることが難しくなってきて
2週間に1枚くらいかそれ以下のペースになっていき
結局作品集ができあがるまでに11ヶ月もかかってしまいました。
●デジタルへの移行 ●
手描きで絵を描くのはものすごく時間がかかります。
ただでさえペースが落ちている上に、作画にも時間がかかるので
先延ばしにしていたデジタルでの作画に切り替えることにしました。
パソコンで絵を描くことは最初から決めていたことですが、
費用がかかるのと、手描きの絵に愛着があって
なかなか踏み切れないでいました。
パソコンは持っていましたが、10年以上も前の古いもので
スペックも低かったので買い換えることにしました。
iMacの27インチ。
けっこう奮発しました!
買うならこれ!と最初から決めていました。
長年Windowsユーザーとして生きてきて
Macを使うのは初めてなので不安でした。
フォトショップを使うのも初めてです。
使い方を覚えるのに時間がかかりそうで、
このことがデジタルへの移行を先延ばしにしていた理由でもあります。
今はネットで調べればある程度のことはなんでもわかるので
わからないことはそうやって調べながら使い始めました。
PCで描いた最初の絵が、デジタル作品集にも載せている
「山ガール」です。
全く使い方がわからない状態から描き出したので
結構時間がかかりました。
出来上がりはあまり満足いくものではなかったです。
自分では「なんか気持ち悪い」絵になった気がしていますが
先生は「どこが気持ち悪いの?いいと思うよ」
とおっしゃるので、作品集にいれました。
PCでの作画になってペースが上がったかと言えばそんなことはなく、
悩んだり迷ったりはあいかわらずあるわけで、
表現の上でできることが増えた分、手間隙がかかるようになりました。
延々と繰り返す単純作業もあって長時間続けられないので、
手描きの絵とくらべて変わらないくらい時間はかかっていると思います。
しかし「やり直しがきかない」という緊張感からは解放されました。
細かいところや重なりの部分を塗る時に、細い筆で息を詰めながら
慎重に作業するという心理的負担が無いということは
こんなにも楽なのか!と思いました。
これから先、特別な事情がない限り、手描きで絵を描くことはもう無いと思います。
● いよいよ売り込みへ! ●
永遠に終わらないかに思えた作品集も、やっと必要な分量の作品が揃い
7月なかばにようやく完成しました!
これからはこの作品集を携えて、出版社に売り込み営業をしていくことになるのです。
先生からは「少なくとも100社に売り込みをかけろ」
と言われてビビりました。
売り込み先を自分でピックアップしてみても5〜6社くらいしかあげられません。
先生に相談すると
「それは本気で探してないから。探せばいくらでもあるはず」
との言葉。
自分でもそうなんだろうなと思います。
本気でやりたく無いわけではないのですが、腰がひけてるというか
失敗するのが怖いというか、なんだかんだ先延ばしにしています。
営業なんてしたことないし、一人で絵を描いているのが好きで、
それを生業に生きていきたいと思っているような人間なので、
そういうことが好きじゃない・得意じゃないんです。
作品集が完成してから既に1ヶ月が過ぎていますが
未だにどこにも営業できていません。
今日、先生から
「営業にも行かない、絵も描かない、でいると絵のレベルはどんどん下がっていくよ。ずっと同じではないよ」
と言われて、「やばい!」と思いました。
● 研修生としてこれからも ●
今日で生徒としては卒業しましたが、しばらくは研修生として
渋谷アートスクールにお世話になります。
営業で行き詰まった時や、作品作りで悩んだ時に
先生を訪ねていけるというのは本当に心強いです。
駅からスクールへの道中は再開発の真っ最中です。
初めてスクールを訪れる時に目印にした本屋さんもカフェも、もうありません。
この1年で街並みが大きく変わりました。
どこもかしこも工事中で、埃っぽくて雑然と殺伐としています。
工事が終わって、開発が完成したら見違えるようになるんでしょうね。
おしゃれでスタイリッシュになるのでしょうか?
クールでモダンになるのでしょうか?
今は混沌として先が見えないけど、目指すところははっきりあるはずです。
この街並みと共に、私も混沌から抜け出して目指している自分になっていこうと思います。
まずは、1社に電話をかけるところから!